早稲田大学政治経済学部 教授
専門
社会政策 / 人的資源管理論
今回は早稲田大学政治経済学部で、人的資源管理論などの研究をされている白木先生にインタビューしました。ゼミも大人気である白木先生に波乱万丈なご経歴、人材育成に関する知見などをお聞きすることができました。
人材、教育分野に興味がある方、海外で働きたいと思っている方は必見です!
目次
学生時代
長年の教員経験を経て
学生時代
〜学生運動から東南アジア訪問まで〜
ー 本日はお忙しい中、ありがとうございます!早速ですが、白木先生は学士から博士まで早稲田で取られていますが、なぜ博士まで通われていたんですか?
それを話すには当時の背景を知ってもらう必要があります。当時は学生運動が盛んで、僕が入学した年は5月からストライキが起こっていました。だから一年生から授業がない期間が多かったです。さらに、そういうことが3年間も続いていました。
ー 今では考えられない学生時代ですね・・・
そうなんですよ。学生時代あんまり勉強できる機会がなかったから、大学院でも勉強しようと思いましてね。また、僕は4年生の時にヨーロッパ旅行に9カ月くらい行きました。その時、第一次石油危機が起きていてイギリスでストライキが発生していました。そこで労働関係のことを勉強しようと思ったんです。
ー 学生運動と石油危機という二つの社会情勢が影響していたんですね。修士になってからは、どのような活動をされたんですか?
修士に入った時に、台湾の労働市場について修士論文を書き、それをある雑誌に載せてもらいましてね。そしたらある教授がそれを見てくれて、「君は台湾に行ったことがありますか」って聞かれたんですよ。そこで私は「ないです」って言ったら、せっかくなら東南アジアの国で博士をとらないかって言われたんですよね。だけどその時、私は早稲田で博士課程を始めたばっかりだったんですよ。
ーそれだと断られたんですか?
だからお断りしたら、それなら代わりに短期で東南アジアを見て回って研究しないかって言われましてね。確かに現場を全く見ていなかったから、短期でリサーチしに行きました。結局35日間アセアンの企業などを一人で回りましたね。
ーそんなお誘いがあったんですね。東南アジアではどのような学びがあったのでしょうか?
そこで企業が何を考えているかが肌でわかりましたね。修士論文を書いた時も現地に行ったことがなかったから、想像で考えるしかなかったんですけど、実際に見学することで資料では見えない問題がわかりました。そのあとも研究仲間と何回も日系企業を中心のリサーチで東南アジアを回りましたよ。
ーそこから国際的な人事育成を研究し始めたんですね。
そうですね。現場を中心にリサーチをしていたのですが、あとで考えるとInternational Human Resource Managementという分野だったんですよ。そこで1990年代に私が初めて『日本企業の国際人的資源管理』というタイトルの本を書きました。この内容の本をだそうとしたら、出版社の人に観光案内と間違われますよなんて言われたこともありましたね。それくらい当時は聴き慣れない言葉でした。
ーそうなんですね(笑)よく言われる人事労務と人的資源管理の違いはどこなんですか?
人的資源管理は人事労務よりも企業の戦略との連携を意識しているところです。
経営状況なども考慮して人事システムを俯瞰しないといけないんです。だからこそ取締役などにもHRの専門家、CHROがいることが望ましいんです。
長年教員をしてきて
〜学生に必要な素養とは〜
ー続いて、現在のお話を伺いたいのですが、早稲田大学で長年教員をやられている理由ってありますか?
私は国士舘でも10年ほど働いていて、そこも良かったんですがね。早稲田は愛着もあるし、学生も活発なところです。ゼミ生もよく動いてます。国際的なブランドもありますし。
ー確かにそうですね、今でも多くの授業を持たれていますよね。
そうですね、多くやらせていただいてます。その中の一つに「人材育成学」という全学共通の科目がありますが、そこでは時々社会人をお呼びして、生徒たちにディスカッションしてもらう授業がありましてね。それは大学から「4年生で就活をどのようにやったらわからない、社会を知らない人たちのために講義を作ってほしい」って頼まれて始めた科目です。もう10年くらいやらせてもらってます。
ーそんな授業もあるのですね。白木先生はゼミも有名だと思うのですが、ゼミを行うに当たって心掛けている事はありますか?
やっぱりゼミ生には現地、特に近隣のアジアを知って欲しいという気持ちがありますね。だから海外合宿はずっと続けてますよ。あとはロジカル面を鍛えるってことでディベートもやってます。これはゼミ二期生が持ち込んだアイデアですけどね。実際に、専門の方にディベートをジャッジしてもらっているから、すごく盛り上がるようです。
ー院生のゼミも担当されていると思うのですが、違いはどこにありますか?
二つは明確に違います。学部生は組織で生かせる基礎的な力を身に着けるようにしています。なので準備や企画などを自分たちでやらせます。大学院生はアカデミックな分野でプロフェッショナルな力を身に付けることが大事なので、専門を極めることが大事ですね。
ーありがとうございます。最後に学生に対してメッセージなどはありますでしょうか?
是非お願いします!
メッセージの代わりに、学生に役立つ二つの興味深いリサーチを紹介しますね。一つ目が20代、30代程度の若手日本人海外赴任者のパフォーマンス分析をしたものです。良いパフォーマンスを出してる人は異文化適応力とかコミュニケーション能力が重要だって結果が出たんですけど、一番統計的に有意だったのは「前向き行動力」ていう要素だったんです。これはへこたれない精神とか困難にどうしたら乗り越えられるかを表しています。
次に世界中で通用する人にはどんな要素が必要かっていう調査なんですが、これは「Continuous learning」が必要ということがわかりました。つまり学び続けるマインドですね。
ーそんな調査があったんですね。これから「前向き行動力」「Continuous learning」を重要視していきたいです。
僕らが生まれた時代には携帯もなかったくらい違いますので、50年もすれば時代は大きく変わります。だからこそ、学び続ける精神は持ち続けて欲しいですね。
ー本日は大変貴重なお話をしてくださり、ありがとうございました!!
(昨年、シンガポール大学を訪問時のお写真)
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