株式会社 電通
クリエーティブ・ディレクター / CMプランナー
本記事は、高崎卓馬さんに取材を行った直後のアフタートークになります。
取材には、大八木さんにもご参加いただき、お仕事のお話など、ざっくばらんにお話いただきました!
BITS & BOBS
大八木さん:高崎さんが、深夜ラジオやってるからRadikoで聞いた方が良いよ。
高崎さん:そうそう。JWaveでね、僕が金曜の夜25時からラジオで喋ってんの(笑)。
大八木さん:脚本、書かれてるんですか?
高崎さん:そうそう、これ書いてんの(笑)。(ラジオの音が流れる)
~ 一同、ラジオに夢中 ~
(ラジオの音♪ )
ー ”BITS AND BOBS。がらくた。他の人から見たらがらくたかもしれないけど、自分にとっては大切なもの。そういうものが、たくさんある方が楽しい。BITS AND BOBS TOKYO、はじまります”。ー
大八木さん:BITS AND BOBS は、「がらくた」で訳せますかね。
高崎さん:ポケットにある小銭、だね。何も買えないはした金。
大八木:「がらくた」でいうと思い出すのが、会社の中にいた変なおじさんなんですよね。無駄なように見えて無駄じゃないって。
高崎さん:昔は会社で、何してるか分かんない人けっこういたのよ(笑)。あのおじさん何の担当してるかも分かんないし職種すら分かんないんだけど、11時くらいになると、ふら~っと「ランチ行こ」と言って築地の市場行って、誰も知らない裏の方の素敵なトンカツ屋さんとか連れて行ってくれて奢ってくれるの。それでその後「ちょっとお茶しようか」という流れになって喫茶店に入り、そこで2時間くらい映画の話して、会社に戻って30分くらい仕事したら「じゃ!」って帰って行く(笑)。それがずっとそういう感じだったの(笑)。何してんだろうなあ~あのおじさんって(笑)。
大八木さん:最近絶滅危惧種ですよねー(笑)。そういう人が沢山いたんですよ。けれど、そういう人がものすごい人とパイプ持ってたりとか、すごいことをおくびにも出さずやってのけたりとか、格好いい人が多かったの。効率って一見無駄に見えることを排除しちゃうけれど、自分がすごいってことを全く自慢しないで漂っている人は大事でしたね。
-在宅勤務が始まると、そういった大事な人たちの活躍も難しいですね。先生方は在宅勤務をどのように過ごされていますか??
高崎さん:在宅になって人との接触が断たれたし新しい生活だったから、新しくルーティーンを作ったの。決めごとを沢山持ってた方が良いなと思ったんだよね。起きる時間を決めて、絶対にベランダの植木すべてに水をあげて、朝風呂に入って、毎日歩いて神社に必ずお参りするっていうルーティーン。最初は欲が深いから、「今日のプレゼン上手くいきますように」とか「思った以上の反応が出ますように」とか色々お願いするんだけど、1年やってると「ありがとうございます」しか言ってないんだよね(笑)。すごいよね、だから宗教ってそういう所あるよね(笑)。お参りを繰り返すって、こっちの欲を落としていく作業なんだよね。叶えるんじゃなくて、叶わなくても良い自分が手に入るっていう。
小説ができるまで
-小説執筆についてのお話を伺いたいです。
高崎さん:土日の休みは全部使って、修行のような日々を2年間続けたのかな。月~金は仕事をし、土日は本を書き進めるという修行の日々だった。登山と一緒だから、どんなに苦しくても10枚は絶体に進むと決めて取り組んで行かないといけない。10枚進んで20枚戻るを繰り返していくから小説は本当に大変だよ。
大八木さん:いつやってたか全く分からないですね(笑)。
平日は電通の仕事しているじゃないですか、その合間が分からないですね。
高崎さん:いつやってたの、と言われることだけを目標にしていた(笑)。
平日は修正しかしていなかったの。土日はフルにやっていて、午前中に書き進めて午後は直して。平日は、その土日に書いた分の検証をしていたかな。直すときも、頭から直すのを何百回も繰り返すから何万ページ書いたんだろうという感じ(笑)。
小説を書くのは飴細工みたいで、最初の100ページくらいが特に大変。飴が透明になって動き始めるまで、凄い強い力を注いで動かそうとしているのと似ているかもしれない。
-本を書く時も、絵コンテをまず始めに書きましたか??授業では、CMを考えるときに絵コンテを使う手法を学ばせていただきました。
高崎先生:むちゃくちゃ書く。あるよ!!
(一同)すごい...!!
高崎さん:登場人物ってみんな同じ時代を生きているわけだから、大きなイベントが起きたらそれを全員が体験していないといけないじゃない。例えば地震が起きたとして、その時に登場人物が何歳だったか、どこにいたか、その前後で考え方にどんな変化が起きたかも考える。中2で震災に遭うのと、新卒で震災に遭うのとで異なる心情・状況の変化を物語の中に組み込んでいくためにも、情況を整理して把握していた。それがこんな感じ↓。
高崎さん:それで、映画でいうチャプターのように大きいブロックを1つひとつ考えていく。その後でチャプター1つひとつのブロックを細かくしていくの。
(あまりの細かさに驚いた一同)え~~~~~!!
高崎さん:付箋で書いて貼っていき、順序を変えたら面白くなるものを考え直しては付箋を動かしていたよ。例えば交通事故が起きたとする時に、急に車を飛び出させたら作者の都合になっちゃうでしょ。だから、事故の前に交差点で「危ないだろ!」と運転手が注意されるシーンを用意するとかね。そういうのをどこに入れておけばいいかを、付箋を動かしながら考える。
-これを実際に動かしているところも見てみたかったです。
高崎さん:みんなもコラムとか書くときあるでしょ?そういう時にポストイットで原稿を考えると凄くいいよ。1回俯瞰をして整理をしてから変えて、その通りにならなくても一度あらすじを自分で構築しているから意外と最後まで書けるんだよね。
高崎さん:この『オートリバース』は、小泉今日子さんの当て役で書いたものなんだけど、主観・客観どちらで書くか迷ったよ。それに一人称・二人称・三人称のどれで書くかにも頭を悩ませた。そこで、他の作者はどうしているのだろうと全部書き写して考えてみたの。村上龍は「僕」と書いていて、小説の書き出しも上手いなあとかを見たりしたよ。あとは、三人称で書くと神の目線で話しているよう、時代小説のような感じになるから青春小説には合わないとかも思ったの。そうして僕が出した結論は「1.5人称」でやることだったんだよね。
-1.5人称ですか?!
高崎さん:そう。「1.5人称」を編み出したの。主観も客観も取り入れていこうと思った。主人公の真後ろにカメラがある感じ。そうすることで、主人公の不機嫌さとかを様子を描写するだけで伝えることができるようになる。もし客観だったら、なぜ状況が悪いかを原因も含めて一から描写していかないといけないでしょ。主人公が知らないことは書かなくて良いとするためにも、主人公の真後ろにカメラがあるように書いていく必要があったんだよね。それで、最後の最後にカメラが反対側に置いてあるというね(笑)。からくりを用意した。
-からくりも凄い・・・!
高崎さん:あとは、編集者の方から教えてもらったんだけど、「全く無関係なものを間に差し込め」と言われたの。例えば、お葬式でお焼香をあげてから故人に近づいて故人を偲ぶシーンを書くとする、この時には子供が砂場で遊んでいるシーンを挟むとかね。そういう無関係なシーンを入れていくと、意味が繋がり始める。その砂場には他に誰もいなくて崩れそうな砂のお城だけができていたとする。そうなると読み手も、「砂の城=脆いなにか」だとかそこに意味を見出し始めるよね。書いている自分としても、ここにくるのは揚げているドーナツじゃないなとかは分かるわけよ(笑)。砂場の忘れられた作りかけの何かの方が合ってるなって分かるわけ。自分も小説を書いているうちに、無関係なものを挟んでいくことの重要さが凄く分かった。
-無関係なものが意味を成していき重要な部分となるのですね。
高崎さん:これだけ大変な思いして書き上げた原稿に、編集者から沢山赤文字がついてきて、もう大げんかですよ(笑)。編集者には、一回私を信じて書いてみてくださいって言われましたけれどね(笑)。まじもう口も聞かないとかって言いながら、直したら、すごい良くなってたりもしてね(笑)。生意気言ってすみませんなんてこともあったな(笑)。
-そんなやり取りもあったんですね(笑)。
高崎さん:執筆中に、これが映画だったら音楽入れられたのにと思うこともあったな。だから頼まれてもいないのに映画として一回書いてみたの(笑)。映画の台本にすると、誰もいない部屋とかを作れるの。小説だと誰もいない部屋とか、話が飛んでしまうから書けないじゃない。話が飛ぶでいうと、映画は回想が簡単なのに小説は回想も難しいのよ。
一方で小説をラジオにするとなると、これを音で説明しないといけないから、登場人物が出てくるところで始めた方が良くて、前のくだりがいらなくなる。
-媒体によって物語の作り方がこんなに違うなんて知りませんでした!!小説ってこうやって書いていくんですね!!
高崎さん、大八木さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
お仕事のお話から執筆の際の秘話まで、初めて知ることばかりで感動と尊敬で気持ちの高ぶりが止まらない時間でした。取材をさせていただき本当にありがとうございました!!
教員プロフィール
高崎卓馬 電通HP
主な担当科目(2021年現在)
グローバルエデュケーションセンター人間的力量科目
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