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小原百葉

高橋真吾先生

更新日:2021年8月13日

創造理工学部 教授


専門

システム理論 / 適応システム論 / 社会シミュレーション / ソフトシステムアプローチ



今回は創造理工学部の高橋真吾先生に取材をしました。ご専門のシステム理論について、文系学生にもわかりやすくお話をしてくださっています。



学生時代について 

〜カリキュラムの外にも学びを見つける〜


ー早速ですが、大学時代に先生の印象に残っている授業や教授はいらっしゃいますか?


僕の大学時代って長いんです(笑)。学部4年間行って、大学院5年間いってるので、全部で9年あるんですね。学部3年生までの印象とその研究室以降の6年間という生活は全く違うんですよ。前3年間の学部の話は、授業という意味では、ほとんど覚えてないですね(笑)。


ー研究室と比較すると印象が薄いんですね(笑)。


結局3年生までの話って理工系の場合は、本当に基礎中の基礎しかやらないんですよ。だから、先生が、いわゆる、本題の知識とは違う話をするところの方が、印象に残ってますよね。


ーなるほど。


むしろ、自分で他の授業を受けに行ってましたね。私の場合、経営工学科だったのですが、数学が好きだったので数学科や制御工学科の授業を取りに行ったりだとか、カリキュラムにないものも受けていました。4年生になって入った研究室は大好きでした。もちろん影響を受けたのはそのときの指導教員の先生に一番影響を受けていますけども、研究室の先輩にも影響をよく受けてましたね。


ー研究室選びには学部の3年間の勉強の影響はあったのでしょうか?


もともと数学とシステム論の考え方が好きだったんですが、2年生の必修科目で、私が現在教えているようなシステム基礎の内容を教わったんです。そこで興味が深まってシステム論が学べる研究室を探しましたね。


研究者になりたいという思いもあったので、システム系の講座の高原研究室と同じ講座の年齢的に近い助教授の先生とで迷いました。高原先生の授業は、若干、学生を置いていく感じの授業で(笑)、難しい質問をひとりひとり名簿であてていくんですよ。で、みんなドキドキしなからやっていくって感じで、厳しくはなかったんですけど、結構緊張する授業でした。高原研究室出身の先生にアドバイスをもらったり、研究者としての色々な話を聞いて、最終的に高原研究室に決めました。その後、その助教授の先生の助手をやったりもしました。


研究室について 

〜大切なことは、入ってからどう動くか〜


ー研究室・ゼミ選びで迷う学生も多いと感じています。先生から納得する研究室選びのアドバイスをいただきたいです。


理工系の場合は、かなりマンツーマンになるんですよね。それで、先ほど研究室で生活変わるっていいましたけど、早稲田も各研究室ごとに学習室があるんですよ。


最近話題になっているアクティブラーニングっていうのがありますけど、実は日本の工学系の研究室というのは昔からいわゆるアクティブラーニングされてたんです。米国の研究者で、アクティブラーニングを唱えている人が日本の工学系研究室を見て、アクティブラーニングというのが良いと思ったという話を聞いたことがあります。


ーそうだったんですね!知らなかったです。


私の場合はシステムが好きだから、システムについて学べる研究室を選びましたが、そのためには結構な予備知識が必要ですよね。


そうじゃない場合には、専門性にはあまりこだわる必要はないんじゃないかな。むしろ、先ほど言ったようにアクティブラーニングで研究室はかなり密になっていくので、研究室毎に生活スタイルが文化のように違っています。そういう文化も自分に合うのか考えることも重要ですね。例えば、就活も同じじゃないですか。同じような業種でも全然社風違うんですよ。


あと注意するのは、授業で見せる先生の姿っていうのは、ごく一部だということですね。授業で教えている内容で特に2年生くらいの必修科目なんていうのは教えなくてはいけないことがあって教えているので、研究の先端とはちょっと違うし、だいぶ実務からも遠いということを知っておくと良いと思いますよ。


ー実際に入らないとわからないことも多そうです・・・。


「第一志望じゃなかったからだからまあいいや」とならないこと。あるいは第一志望に通ったからって慢心しないことですね。「人間万事塞翁が馬」って私の好きな言葉なんですけど、与えられた所で全力を尽くすことで道が開けますから。


志望順位の高い研究室に落ちてしまうと人生終わったような顔をする学生がいるんだけど、状況に合わせて自分の全力を尽くせる人が成功します。例を出すと、ノーベル化学賞をとった白川秀樹先生は、4年生の卒業研究でも大学院に行くときも第一志望の研究室にはいれなかったけれど、その研究室で研究したテーマがノーベル化学賞を受賞に繋がったそうです。


ー研究室に入った後が大切だということですね。


ー学部生の頃から研究者を志されていたと思うのですが、就職を考えられたことはありましたか?


正確にいうと研究者になりたいと考えていたわけではないんです。ただやりたいことをやっていたというだけ。僕の場合、研究室での勉強が好きだったから、そのまま続けていて博士課程もとって・・・という感じだったんですよ。研究者になるという野心があったわけでもなく、実はその後どうなるかということはあまり考えていませんでした。だから、不安はありましたね。だけど、いわゆる一般企業の就職活動はせずに研究をしていました。


システムの魅力と学生時代の過ごし方 

〜食わず嫌いはしない〜


ーシステムにご興味を持たれたきっかけを伺いたいです。


システムの考え方が好きになったのは18歳くらいの時にシステム工学という言葉を見つけたことがきっかけです。まず初めはその言葉がわからなくて、調べていくうちに創発性の考え方に魅力を感じるようになりました。


もう一つ、数学がとても好きだったので、システムの理論的な研究が20世紀の構造主義的な数学を最大限に利用しているところも面白いと思いましたね。


ーでは、システムの魅力はどのようなところにあるのでしょうか。


システムは関係性の学問で、一人よりも複数の人で力を合わせると全体としてより大きな力になるという考え方なんです。この考え方自体は日常にあるものですが、学術的な魅力は、なぜそのような力が発揮できるのか、あるいは、どうやったら二人の方が力が発揮できるのかということを探求したり、チームをデザインするといったことですね。


ーシステム理論で解決方法を見つけることが難しいものはあるのでしょうか。


基本的にシステムというのは対象が複雑なものに対して、問題となっている部分を切り出していくんです。なので、複雑性が強いものは上手い切り出しを見つけるのが難しいんですよね。


例えば、サークルで起きた課題を解決するとしましょう。サークルの中だと学生だけだけど、そこに大学、行政、企業といった異なる利害を持つ人たちが集まってパフォーマンスを発揮するというのは難しいんです。システムが力を発揮するのは共通の目的に向かって、全員が協力する時なんです


ー学生団体を運営する一人として、とても興味深いです。


ー先生が今後、さらに深めたいと考えられている研究テーマはありますか。


理工系だと最適化といって解を求めやすいテーマを研究しがちなのですが、目的関数が複雑で予測が難しいテーマを研究したいと思っています。


銀行のシステムトラブルなどもコンピューターが原因ではなく、組織がシステム的に問題があったりするんですよ。今、システム屋として私が追求したいのは、環境が大きく変化して、先の予測が立てられない時にどうやってシステムが自分自身で学習し、進化していくかということですね。


ーお話を伺っていて、先生の研究が文系学生にも馴染みやすい内容であると感じました。


学生のみなさんに伝えたいのは、食わず嫌いをしないで欲しいということですね。文系だから数学は関係ないとか、理系だから思想的な話を嫌わないで欲しいです。学生の間に関係のないものも幅広く学ぶと視野が広げられるので良いと思います。社会に出てしまうと関係していることしか勉強する余裕がなくなってしまうんですよ。


スティーブ・ジョブスも、学生時代に役に立てようとも思わずに勉強したことがApple設立に役立ったと話しています。クリエイティビティというのは実は0を1にするというのではなく、既存のAとBを掛け合わせて、Cにすることなんですね。

言い換えると、組み合わせるAやBを多く知っているほどクリエイティビティが高まるんです。それも近いもの同士ではなく、違うものであればあるほど、革新的なものが生まれています。遠いものを結びつける力が強い人が一流と言えると思いますね。だから、学生時代は好き嫌いせずに色々なものを学ぶと良いと思います。


今回の取材は高橋研究室生からの「是非、先生を取材して欲しい!」という直接の依頼で実現しました。学生から絶大な信頼を得ていらっしゃる高橋先生の人柄が伝わる取材でした。

本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!


教員プロフィール

高橋研究室 HP


主な担当科目(2021年3月現在)

経営システム工学総論

システム基礎

情報システム開発演習

応用システム思考

経営システム工学専門実習(システム分析)

社会システムモデリング(大学院)


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