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執筆者の写真わせいろ

片岡孝夫先生

更新日:2021年8月14日

商学部 教授


専門

経済理論/マクロ経済学/財政学

今回は、経済学の第一線で研究されている片岡孝夫先生にインタビューしました。

先生と経済学の出会いまでお話を伺っています。



学生時代 

ー先生は早稲田中高ご出身でいらっしゃいますが、早稲田大学ではなく北海道大学に進学された理由はなんだったのでしょうか?


早稲田中高って早稲田大学のすごく近くにあるんですよ。それでね、受験ってしんどいじゃないですか?しんどいものの先に今とは違う生活があって欲しいなって思ったんです。


たぶん早稲田大学から遠い所にいたら憧れを持ったのかもしれないですけど、僕の場合は近すぎたんですね。


早稲田大学の学生食堂を頻繁に利用されていたとか、、、。


今の本部がある場所に食堂があったんですよ。大学の生協ってやっぱり安いからしょっちゅう行ってましたね。だから、このまま早稲田大学にいったら、今の生活の延長だなという感じがなんとなくしたんです。


ー変化を求められていたんですね。


まあ、正直にいうと受けても入れなかったと思いますね、、、早稲田の入試って重箱の隅をほじくるタイプじゃないですか(笑)。


ーそうですね(笑)。


とにかく受験をきっかけに生まれ育った東京から出てみたいと思って北海道に行きました。


ー先生は大学卒業後にアメリカに留学されていらっしゃいますよね。留学時は伝説のプロレスラー、ブルーノ・サンマルチノと握手されたという話も耳にしました!


よく知っていますね(笑)。小さいころから父親の膝の上でプロレスをみていたら関心がでてきて、大学生時代にもプロレスブームがきてものすごくはまっていましたね。


ー現在も続けていらっしゃる趣味についても伺いたいです。


以前から少しやっていましたがコロナになってから家で過ごす時間が増えて料理することが増えました。ぬか漬けや味噌から始まり、うどんをうったり、とうとうラーメンにも挑戦したりしました。もちろんお店のほうが美味しいとは思うんですが、スープも麺もつくってみるとちゃんとラーメンができるんですよ。パンも最初の頃はなかなか上手くいかなかったけど一種の実験みたいなもので、何回か繰り返している内に楽しくなってしまいました。


ーパン作りは難しそうなイメージがあります。

いやいや簡単ですよ。それに、所詮、小麦粉とイーストと塩だから、カチカチになっても食べられますからね(笑)。


経済学者ケインズとの出会い

ー中高時代は古本屋の10円コーナーに通い詰めていらっしゃったほどの文学好きとも伺っていますが、文学部に進むことは考えられなかったのですか?


中高の時は一応、文学少年だったといってもいいかな?(笑)今考えると自分の好きなことをやるのも良かったのかなと思うんですが、自分の生活と関わってくる社会科学系の分野を学んでおこうと思いました。北海道大学は入学後2年間、色々な勉強をして学部を決めるんですが、それで社会科学系の中でもメジャーな経済学を選択しましたね。


ー経済学の学びを深められるきっかけとなったというゼミのお話も伺えますでしょうか?


僕はね、まさか自分がこんな職業に就くと思っていなかったし、正直、勉強も好きじゃなかったんですよ(笑)。当時の大学の雰囲気っていうのは、学園紛争とかがあった時代だから大人は汚いという考えと言いますか、、、。毎日学校なんかに行って”真面目にお勉強”するのは格好悪いっていうような雰囲気だったんです。僕も勉強しにいこうと思っていたわけでもなかったので、サークルばっかりしていたんですよ(笑)。


ところが大学3年生でゼミに入った時に、せっかく大学に入ったのだから少しは勉強しようかなと。僕にとってゼミは大きな存在でね、似たような人が集まった中でちょっと自分のカッコイイところ見せたいな、なんていう心理が働いたんです。というのも、何百人もいる授業の中で頑張るっていうとそれほどの価値を見出すことは難しいけれど、5〜6人の中で頑張るということは価値は大きく感じたんですよね。


ーその感覚、わかる気がします。


もう一つは先生に認められたいという気持ちもありました。忘れもしないんですが、ケインズという経済学者の本を読んだんです。これは僕にとってはとても重要な出会いでした。けれど、彼の本は全く読者にサービスしない頭のいい人だけが分かればいいとでもいうような書き方がされているんです。ひょっとしたら、あえて簡単に書くことができることも難しく書いているのではないかと僕は思うんですよ。少なくとも学生の僕には、階段を三段跳びしていくような不親切な本に腹も立ったんですが、やっぱりカッコつけたくて頑張って読んだんです。


ー学生が理解するにはかなり重い専門書だったのですね。


読書百遍意自ずから通ずっていう言葉知ってますか?最初はチンプンカンプンでも回数を重ねると理解できてくるということなんですが、ケインズの本も10回以上は読みました。そうすると、クロスワードパズルが一度埋まり始めるとどんどん埋まっていくような感覚と同じですね、「あれ、この人の言ってることわかるぞ」ってなったんです。その時ね、すごく大きな感動がありました。


僕が初めて出会った人類的に重要なものといいましょうか、、、。大学で習うようなことを発見した人たちって「我発見せり!」みたいな物凄い高揚感を感じて、その興奮状態で本を書いていたんだと思うんです。


大袈裟な言い方かもしれないですが社会に大きな影響を与える発見をした人の本を理解することで彼らの興奮を直接体感できた。自分は偉人たちが創ってくれた社会を消費するだけの生活を送るものだと思っていたけれど、そんな社会を創る側の興奮を理解できたことで、この人たちすごいなと、、、。そして、それがわかる俺もすごくないか?と思ったんですよね(笑)。


ー間違いないです(笑)。


この体験ですごく重いものにガツンとぶつかった気がしたんですよね。それから自分のゼミの先生を見るとね、まあ冴えないおじさんなんです(笑)。


でも、その冴えないおじさんが僕と全く同じ体験をしてたんですよ。その先生はすごく大きな業績をあげられた訳ではないんですけど、この世界で食べて行こうと深められている姿が本当にカッコいいなと思ったんです。その背中をみて僕も今のようになっています。



経済学に魅せられて進んだ教員の道

ーでは、企業に就職するという選択肢は先生の中には全く無かったのでしょうか?


なかったですね。当時はね、バブルの少し前で社会は登り坂だったんです。就職はちょろいなみたいな空気もあったんですが、いつも4月になると新入社員の研修風景がテレビで放送されていたんです。学生時代の甘っちょろい空気を吹き飛ばす一種の通過儀礼のようなことを企業がさせていて、自衛隊に1週間体験入隊させるとか、駅前で自分の会社の名前を叫びながらビラ配りをするとか、、、。


ー今では考えられないです(笑)。


体育会系の研修を多くの企業が取り入れていたんですが、当時の僕は学者たちの本から学びを得ていたこともあって、一般企業に行きたいとは思わなかったですね。


ー早稲田大学で教鞭を執られることになったきっかけはありますでしょうか?


うーん、その時その時の偶然といいますか。お話をうけて人生を歩んでいたら早稲田大学にいきついたという感じですね。あまりドラマチックなものではないです(笑)。


ーそうだったのですね!先生は複数の授業やゼミをお持ちだと思うのですが、学生に意識してもらいたいと思うことはありますか?


早稲田大学では歴史を感じながら経済学を学ぶことができるということですかね。


11号館の5階にある天野為之講堂って知ってますか?天野為之さんは早稲田大学の礎を築いた「早稲田四尊」のうちの一人として有名ですが、何よりも彼の経済学の導入が学問的な事績と言えるでしょう。僕は日本で始めてオリジナリティのある経済学者と呼んでもいいとも思っています。簡単に説明すると、彼は経済学の当時のバイブルと言われていたJ.Sミルの思想を批判的に咀嚼した人、つまりケインズと同じ発見をした人なんですね。


だから僕はケインズのマクロ経済学の話を天野為之講堂で学生にすると何か運命みたいなものを感じます(笑)。実は早稲田の教室の名前となっている人物がケインズの先駆者の一人なんですよって。


ーそのようなストーリーがあったなんて知らなかったです、、、。


そうなんですよ。だから僕は早稲田大学で経済学の講義することにとても意義を感じています。学生さんには、そんな歴史も知ってもらえたら嬉しいですよね。


学生へのメッセージ

ー最後に学生にメッセージを頂戴できますでしょうか?


コロナの影響でコミュニケーションをとるきっかけが少なくなってしまったかと思いますが、人と人との繋がりを大事にして人間関係を構築してほしいですね。僕も時々昔の同窓会などに行きますが、旧友に会うとあの時一緒に過ごした時間は価値あるものだったなあと振り返ったりします。ゼミも良いと思いますよ。遊んだ思い出も大事ですが、一緒に勉強したよねと振り返れる仲間作りにも励んでほしいと思います。


片岡先生、ありがとうございました!


経済学への先生の熱い想いに引き込まれました。

経済の学びを深めたい学生は、片岡先生の授業を受けてみてはいかがでしょうか。


教員プロフィール

片岡孝夫 研究室 HP


担当科目(2020年現在)

・マクロ経済学

・基礎経済学 

・ビジネス入門

・変化に対応する日本企業

・マクロ経済理論

・応用マクロ経済学研究

・ミクロ経済学

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